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歴史と記憶の関係を問うことは、心性の次元から歴史上の多様な現象を理解することにつながる。なぜなら、ある時点における過去の「記憶」は、同時代の状況を反映しつつ人々の意識と行動に影響を与え、またある時点に社会的規範として定着した「慣行」は、変容を伴いつつ長期的に持続し、このいずれもが歴史を展開させる原動力になりえたからである。本書は、紀元前一四世紀~後三世紀の西アジア・地中海地域における「記憶」と「慣行」にかかわる諸問題を検討し、様々な「過去と現在」の連関を提示する試み。
第1部 エジプト―慣行の展開(アマルナ文書にみる専門的技能者と東地中海世界後期王朝時代における国王祭祀)第2部 ギリシア―記憶と慣行(民主政復興期におけるアテナイ外交―民主派ネットワークと帝国の遺産古典期アテナイにおける顕彰と業績の「記憶」―「冠の授与」の慣行に注目してアッティカ史叙述におけるディオニュソス到来の記憶)第3部 ヘレニズム―記憶の編集(使節の演説における過去の語り―ポリュビオス『歴史』を手がかりにペルガモン王国「独立」の記憶の編集―前三~前二世紀の政治動向を手がかりにヘレニズム詩におけるアレクサンドロス―名声(kleos)を伝える歌)第4部 ローマ―記憶と歴史(ポンペイ城壁に刻まれた二つの歴史の記憶―CIL I2.1629を手がかりにして前四四年の偽マリウス事件とユリウス・カエサルの記憶化「若者殺し」の系譜―ヘレニズム君主の記憶をめぐる帝政期の歴史叙述)